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『恋の骨折り損』&『McQUEEN』 [観劇]

結局ストラットフォード滞在中に観た舞台は8本でした。13本中8本、何とか半分以上に足を運んだことになります。

多くの収穫、素晴らしい作品やプロダクションとの出会いがありました。

が!やはり注目すべきは『恋の骨折り損(演出:ジョン・ケアード)』でしょう(笑)。



いくら英語に慣れ親しんでも聞き取りにくいのがシェイクスピア。日本人にとっての古典歌舞伎のように、イギリス人でさえも理解できない部分があるのですから、私のような人間が分からないのは当然ですね。

ですから、馴染みのないシェイクスピア作品を観に行くときには、予習していくのを常としています。

恥ずかしいことに、『恋の骨折り損』をきちんと読んだのは初めてだったのですが……
「なんて面白いんだーっ!」
と叫ぶくらい(叫びませんでしたが)好みの作品でした、人間味に溢れていて。

学術や信仰もいいけれど、謳歌しない人生に何の意味がある?と問いかけてきます、彼独特のユーモアをもって。

そして女性の描かれ方も素晴らしい。

同じフェスティバルで『じゃじゃ馬馴らし』も上演されていましたが、私は観に行きませんでした。プロダクションが良くても(実際に良かったらしい)、どうしてもこの作品自体が好きになれません。女性の描かれ方が気になって仕方ないのです。

ジョン曰く、
「シェイクスピア自体、『じゃじゃ馬〜』を書いた後で後悔したんじゃないか? でなければ批判されたか。それで『恋の骨折り損』を書いた、と僕は思っている。」

けれどもこの作品、とにかく言葉、言葉、言葉で攻めてくる。そして他のどの作品よりもVerse(韻文)が多いために、言葉を駆使する目的で書かれた内容に乏しい作品、普通には理解し難い作品、といったレッテルを貼られて、上演されなかった時期が200年以上続いたとか。

信じられません!!! とにかく私は好きです。

ジョンの演出したプロダクションに話は戻ります。

弱さ、滑稽さを理解しつつも人間に対する愛情に満ちている。内容をしっかり伝えながら、決してユーモアのセンスは忘れない。ジョンらしさ満開のプロダクションでした(手前味噌)。

そして役者たちが素晴らしいのなんのって。唸ってしまうほどの芸達者たちが、それぞれの違いを生かして役を演じていました。

美術・衣装も美しければ、生演奏にこだわったオリジナル音楽も効果的で、ちょっと3月の日本語版『十二夜』を思い出したりもして。


で、『恋の〜』の初日が開いた翌日にロンドンに帰り、もうほぼその足で仕事に出かけたジョン。春にロンドンの小さな劇場で初演された『McQUEEN』がウェストエンドにトランスファーされたからです。



ある意味、『恋の骨折り損』とは対極にあるような作品。

数年前に自ら命を絶ったファッションデザイナーのアレクサンダー・マックイーンを題材に、コックニー(下町の労働者階級が話す英語、『ピグマリオン(マイ・フェア・レディ)』のイライザが話す英語)やアメリカン・アクセントで書かれています。

死に思いを巡らすマックイーンが、家に忍び込んできたミステリアスなアメリカ人の女の子ダリアと過ごす不思議な夜。彼女は一体何なのか?

ジェームズ・フィリップの本は、ファッションデザイナーという枠を超えた一人のアーティスト、一人の人間の苦悩を描き、独特の世界を作り上げています。

ファッション、というだけで軽薄な世界に違いないと嫌厭し、低く評価する人たちも(特に英国演劇界には)多いようです。
でもヴィクトリア&アルバート美術館で開催された『アレクサンダー・マックイーン展』が動員数の記録を塗り替えたのは、たかがファッションとは言い切れない、本物のアートが持つ美しさ、強さがあったからに違いありません。
ファッションは好き、でもファッション展は嫌いという私も、これには2度行きました。出来れば、あと2、3回観たかったくらい。

第一、脚本家のジェームズにしても、演出のジョンにしても、普段はファッショナブルの対極にいるような人たちです(笑)。決してファッションを語るお芝居ではありません。ぜひファッションへの偏見の目を捨てて観ていただきたい!

とは言いながら、演出された舞台はどこまでもスタイリッシュ。ジョンの引き出しの多さに改めて驚きました。
モダンな技術が駆使された装置、華やかな彩りを加える美しいダンサーたち(マシュー・ボーンのカンパニーでダンサーとして活躍するクリストファー・マーニーの振り付けは退廃的で美しい)、そして実際にマックイーンのコレクションで使われた音楽。

それでもドラマにはきちんと焦点が合っていて。

マックイーンを演じるスティーヴン・ワイト、言葉では表現できません。圧巻です。



『恋の骨折り損』はカナダ・ストラットフォードのフェスティバル・シアターで10月9日まで、『McQUEEN』はイギリス・ロンドンのシアター・ロイヤル・ヘイマーケットで11月7日まで上演されておりますので、お近くにおいでの際は是非ご覧ください。

ストラットフォードの日々 Part 3 [生活]

カナダからロンドンに帰って数週間が過ぎ、子供達の新学期(新学年)も始まりました。ロンドンは8月末から冬に突入(笑)。日中はセーターを着て過ごし、夜には湯たんぽを抱える寒さです。

舞台の仕事があった夫はストラットフォード・オンタリオに2ヶ月ほど滞在し、我々家族はその後半の一ヶ月に合流したわけですが、最後の10日間は私の妹一家も遊びに来て、何とも賑やかに楽しく過ごしました。

トロントからレンタカーでやってきた妹たち。その10日間は我々も車を借りて、カナダの自然を満喫しようと遠出をしました。

ひたすら真っ直ぐに続く道。あまりに見事な直線すぎて距離がつかめません。ちょっと先にいるように見える対向車とすれ違うのは数分後だったり。日本やヨーロッパとはスケールがまるで違う、さすが世界第二の面積を誇る国だと実感します。

ハンドルを動かすこともなく向かった先はヒューロン湖。北アメリカ大陸にある五大湖の一つです。
あまりの大きさに対岸は全く見えません。湖畔は砂だし、まるで海のよう。波のない海。
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水を見ると真剣に泳ぎたくなる私。とは言っても、口に入ってくる水の塩辛さが苦手で海は見るのが専門、プールは塩素への嫌悪が強まる一方で……

湖最高〜!これだわ〜、私の求めていたものは!!
波は無いし淡水だし塩素は入っていないし、もうずっと泳ぎ続けていたいっ!!!

水温は高くありませんでしたが、日差しが強かったので、暑くなると飛び込んで、冷えてきたら日向で温まってと、何とも贅沢な時間を過ごしました。



次は森林の保護地域。蚊を警戒しながら、木々の間、背の高い草の間を歩きます。誰にもすれ違わない、逆にすれ違ったら驚く静けさです。自分の子供たちの声がウルサイのですけれどね、でも耳をすますと色々な鳥の声が聞こえてきて……
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見上げると木のかなり上にある誰かの巣。どんな鳥の棲家だろうと考えていたら、
「あれはポーキュパイン(ヤマアラシ)の巣だ」
と夫J。幼少期にカナダの自然の中を走り回っていたので詳しいです。
へぇぇ、ヤマアラシってあんなに高いところに巣を作るのね、あの棘だけでは身を護りきれないのかしら。

森林の外は、見渡す限りトウモロコシ畑が続きます。
ドライヴしていてもそう、道路の両側はトウモロコシ、トウモロコシ、トウモロコシ、またまたトウモロコシ。農家も規模が大きくて、まったく景色が変わりません。

印象的だったのは雲です。湖が近いからか、いつもドラマチックな雲が空に……浮かんでいるというよりも、湧き上がっているという感じ。



そしてナイアガラの滝。
ストラットフォードから車で1時間半〜2時間ほどの距離ですが、あまりに有名なので二の足を踏んでしまい、
「行った方がいいと思う?」
なんて、知り合ったカナダ人に聞いてしまいました。

「せっかくこんなに近くにいるのだから行かなきゃ駄目よ、一回は見ておきなさい。」
という言葉に励まされ、そして妹一家も行く気満々だったので、仕事をしている夫を置いて二家族で出かけました。

着いてみると、心配通り人は多いし(我々もその一部です)、周囲の観光開発は日本もビックリのケバケバしさ、そこで心が折れそうになりましたが、滝を目にした途端に、
「おおぉぉっ!」
圧倒されました。
滝の大きさよりも何よりも、その水の量に。今でこそ水量調節等でコントロールしているそうですが、それまでは1年に1メートルずつ削れて後退していた、というのも納得です。
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「川の流れは絶えずして……」と頭に浮かんでも、あっという間にその大量の水とともに落ちて行く勢いでした。

それにしても、暖炉の火や落ちてゆく滝の水って、何故ずっと見ていても飽きないのだろう?