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平和共存 [生活]


 今朝、ジハーディ・ジョンがアメリカ軍によって殺害されたというニュースを読んだ時、胸がざわついた。

 英国首相のデイヴィッド・キャメロンは、数々の外国人ジャーナリスト、そして多数のイスラム教徒をも殺してきたジョンの殺害は”自衛行為”だと言い切って支持したが、私には西欧の”報復行為”にしか思えず、相手側にまた一つ報復の理由を与えたことにゾッとしたのだ。

 ロシアがシリアへの爆撃を始めたら、数週間後にはロシアの旅客機がシナイ半島上空で爆破された。

 パリで起きたテロのニュースに言葉通り震えが止まらない。複数箇所で同時に起きたテロは綿密に計画されたものでジョンの殺害とは直接関係ないかもしれないが、暴力の連鎖の渦中にいる恐怖で眠ることもできない状態だ。

 パリはロンドンのすぐ隣、ユーロスターで2時間という距離。決して他人事ではなく、自分たちがターゲットになっていることを肌で感じる。

 フランスのオランド大統領だけでなく、アメリカのオバマ大統領、イギリスのキャメロン首相もすぐに声明を出した。
「人道に反する」「何の罪もない市民を犠牲」「許されない」という言葉が繰り返される。

 私もテロリズムには言葉にならない怒りを感じる。

 では我々が中東で行っていることは何なのだろうか?
 虚偽の情報をもとに「人道に反する」戦争を起こし、「何の罪もない市民を犠牲」にして、それが「許される」のだろうか?

 私がここで震えているように、中東にだって一瞬たりとも心が休まらない恐怖の中で暮らしている普通の人々がいる。
 我々がしていることはテロリズムとは違うのだろうか?

 暴力を暴力で返す。誰かがどこかで止めなけば、それは延々と続いていく。


 数ヶ月前、夫の友人に招かれてケンブリッジ大学での夕食会に出席したのだが、夕食の席でちょっとしたレクチャーがおこなわれた。

 テーマは、『西欧生まれのイスラム教徒が聖戦に参加する心理』。

 ゲスト・スピーカーは、イスラム系のケンブリッジ大学卒業生で聖戦参加の経験がある人物、大学在学中の若い頃、アフガニスタンで2年に渡って対ソヴィエトの聖戦に参加したという。

「2年に渡ってとは言ってもね、ある年の12月末から翌年の1月頭まで、たったの2週間だよ。」
という笑いで始まったスピーチ。
「自分の理想郷を目指す情熱を持つとともに、武器を使って戦うことにロマンを感じていたんだ、その年頃の男に特有のくだらないロマンさ。」

「でもいざ銃を撃つ訓練を始めたら、まずは耳元で響くその音の大きさに驚愕し、そして実際に人を殺すのかもしれないという現実が恐ろしくなった。」

 若者を引き寄せるための合宿のようなものだったのか、彼は2週間で帰ったという。暴力へのロマンはあっという間に恐怖へと変わったが、
「理想郷を求める気持ちは容易には消えなかった。今の若者たちが中東に向かう気持ちも同じだと思う。」

「差別だよ、自分はイギリス人としてイギリスで生まれたのに、外見や宗教で差別される。どこか自分が心地よく居られる場所を見つけようという心理は理解に苦しむものではないだろう?」

 人種や宗教の差別、これは異人種が混在する歴史が長い国でもいまだ根深い問題だ。

 私も日本人としてこの国で受けた差別、感じた違和感は数え切れないが、私は自らの意思で移住した身、この国に住むことを選んだ時点で覚悟は出来ていた。
 それにまだ日本人であり、自分の国と呼べる日本がある。

 だが、帰る場所の無い政治的・宗教的避難民たち、自分の意思とは関係なくその国に生まれた異人種・異宗教の子供たちが、自分の国として暮らしたいのにそう扱われない。その不満の大きさは計り知れない。

 そして理想郷を求める。

 自分を差別する世界が攻撃する国こそ、自分たちが守るべき理想郷だ。

「では暴力で理想郷を得ることはできるのか? 答えは否だ。イスラム原理主義者の聖戦は、イスラム教徒が安らげる場所を作りはしなかったよ。」

 そして、彼はこう続けた。
「私には子供が4人いるけれど、最後の子の出産直後、妻が危険な状態に陥り生死の間を彷徨ってね。でもその時、そこにいる全てのスタッフが必死の治療を施してくれた。人種や宗教の相違なんて関係無く、皆が全力で私の妻を救ってくれたんだ。」

「世界を動かすのは、この力であるべきだ。お互いがお互いを殺しあう力ではなく。」

「平和共存は可能だと信じている。」


 ジハーディ・ジョンに処刑されたアメリカ人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリーの母親が、ジョン殺害後に受けたインタヴューで放った言葉が心に響く。

「ジョン殺害が慰めになるかって?ノー。違う状況に置かれていたら、おそらく息子ジムはジョンと友達になり、彼を救おうとしたわ。貴重な資力をこんな復讐に使ったりして……そっちがやるなら、こちらはこの男を殺してやる、みたいな。資力はアメリカの若者を救うことに活用するべきよ。」

「ジムは、きっと嘆き悲しむ。彼は平和を望んでいたの、何故こんなことが起きるか、それを解決したかったのよ。これは正義なんかじゃない、ただ悲しいだけ。この狂気じみた哀れな若者ジョンの死を勝利として賞讃しないよう、私たちは注意すべきだと思う。」

「我々の国が平和への道を選ぶことを願うわ。」

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