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EU離脱と大統領選 [生活]

EU離脱の国民投票の日、レ・ミゼラブルの作曲家であるクロード=ミッシェル(フランス人)とシャーロット(イギリス人)の家に招待されていた。4人で食事している間の話題はこの投票のことばかり。クロード=ミッシェルと私の2人はイギリスにとって外国人であり、シャーロットと我が夫の2人はその外国人と結婚していて、ふた組の間にはハーフ・イギリス人の子供たちが合わせて4人いる。これは切実な問題だった。

クロード=ミッシェルと私に投票権はないため、イギリス人の判断に任せるしかない。この国民投票が我々の存在を否定か肯定する、そんな気持ちになっていた。

幸い私の夫の家族に離脱を望む者はいなかったが、シャーロットの家族は世代や居住場所や職業といった理由で二つに分かれており、家族間でこの件を話題にするのはなかなか難しい状況のようだった。

食事が終わり、ちょっと開票状況を見てみようということになってテレビをつけると、EU残留派が優勢だったので、お互いに笑顔で「さよなら」を言い合って帰途につき、そのままベッドへ直行した。

翌朝目覚めてニュースを見た瞬間、言葉通り声を出して叫んだ。信じられなかった。信じたくなかった。

そしてアメリカ大統領選、私がベッドに行くときは大方の予想通りヒラリー優勢。けれども今回は、朝起きたらトランプが勝っているのでは、と感じていた。第六感などではなく、期待を裏切られないための予防線でもなく、これが今の世界の流れだなのだということが、もう自分のなかで否定できなかったからだ。

夫は仕事先のニューヨークで今回の結果を見守っていた。EU離脱ではそこまで驚かなかった彼だが、なぜか大統領選に関しては楽観的だった。いくらなんでもアメリカはあんな男を自分たちの大統領に選ばないだろう、そこまで愚かな人々ではないと主張する夫に、私は「あり得る、絶対にあり得る」と言い続けていた。結果を見て早速テキストを送った、「ね、言ったでしょう?」

私はトランプを選んだアメリカの人たちを愚かだとは思ってはいない。現代のアメリカが抱える切実な問題が彼を選ばせた。彼自身がどこまで自分の言ったことを信じているのか、どこまで実現可能かは不明だが、彼のレトリックは色々な意味で人々を魅了した。

EU離脱の際に、UKIP党のナイジェル・ファラージュ(これも私にとっては冗談のような人にしか思えない)が多くの人を魅了したように。

EU離脱 、アメリカ大統領選の勝者によって共通して叫ばれたのは、移民を制限する、自分の国を取り戻す、という二点だ。
経済に暗雲が立ちこめて失業者が増えたとき、異国が脅威を与えてくるとき、これは魅力のある言葉に聞こえる。

EUの発案者、 EUの父と呼ばれるのはハーフ日本人、あのクーデンホーフ光子の息子リヒャルトだ。私は、彼が当時は珍しかった(特に特権・貴族階級において)ハーフ・オリエンタルという存在であったことが、EUの発想に強く影響していると思っている。
私自身は大きな決意をもって踏み越えた国境も、私の子供たちは簡単に行き来する。ヨーロッパではそもそも『純血人』を探すことさえ難しいのではないだろうか。

ヒトラーを苛立たせたこの『混血人』の理念に基づき、疲弊した第二次世界大戦後のヨーロッパは統一されてゆく。

そのことを、EU離脱支持者との会話の際に持ち出すと、
「そう、 EU統合は争いや憎しみに疲れたきった我々の理想だった、でも結局我々はお互いを簡単には理解できないし、お互い妥協もできないのだよ」
と返された。

では人間は、戦争、疲弊、和平、統合、平和、不況、不和、分離、戦争というサイクルを永遠に繰りかえし続けなければならないのか? その不和と分離の時点で、何か違う選択はできないのか?

我々は誰だって遡れば、どこかの時点では必ず移民だったはず。だから私は、自分の国を取り返す、移民は制限しろ、と叫ぶ人を見ると違和感を感じずにはいられない。国って何だろう? そこに何年、何世代住み続ければ、法的のみならず精神的にもその国民になれるのだろう? 

アメリカでは、殆どの人が自分の先祖がどこから移民してきたのか遡れる。その先祖は原住民を迫害した侵略者(自身は開拓者と名乗っても)だったかもしれない。戦争によって自国の地を泣く泣く後にした避難民だったかもしれない。そうした人たちが、未来の移民に対して厳しい態度をとり、意思に反して連れてこられた奴隷の子孫に向かって「国へ帰れ」と言ったりする。

そこまで遡ったらキリがない?
でも……

事前調査では(投票所の調査でさえも)、EU残留、ヒラリー優勢と伝えられていた。
結果は両方反対。

EU離脱支持者、トランプ支持者のなかには、どこか大きな声で言えない、後ろめたい心を持つ人たちがいたのは確かである。


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